Contract
信託目録の登記
何を登記すべきで、何を登記すべきでないか
佐賀▇▇▇書士会 財産管理研究委員会委 員 ▇▇ ▇▇
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信託契約書の作成・契約の締結
(▇▇証書、私署証書)
信託財産
金 銭・・・信託口座の開設(金融機関)
不動産・・・信託の登記(所有権移転+信託)
付随して「信託目録」の登記を申請する
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信託契約と登記の関係
1.信託財産の倒産隔離機能(信託法第14条)
➡信託財産であることの登記・登録による第三者対抗要件としての「公示」ルール
2.受託者の分別管理義務(信託法第34条)
➡受託者の固有財産との区別のため信託不動産であることを登記する義務
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信 託 目 録 | |||
番 号 | 受付年月日・受付番号 | 予 | 備 |
第○○号 | 令和〇年〇月〇日第○○○○号 | 余白 | |
1 | 委託者に関する事項 | 佐賀市○○三丁目〇番〇号 A | |
2 | 受託者に関する事項 | ▇▇▇▇▇▇▇▇▇▇▇▇▇▇▇▇▇ ▇ | |
3 | 受益者に関する事項等 | 佐賀市○○三丁目〇番〇号 A | |
4 | 信託条項 | 「信託の目的」 ・・・・・・・・・・・・・ 「信託財産の管理方法」 ・・・・・・・・・・・・・ 「信託の終了の事由」 ・・・・・・・・・・・・・ 「その他の信託条項」 ・・・・・・・・・・・・・ ・・・・・・・・・・・・・ ・ ・ ・ | |
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信託の登記を申請するときに専門職として意識すべきこと
一度登記されることによって生じる登記の▇▇性の推定や連続性の効果を考慮しなければならない
信託登記後に受託者が信託財産の処分や変更の登記を申請するときは、当該行為の権限が信託目録中に記載されている必要がある
(先例:昭和43年4月12日民事甲第6634号回答)
➢信託目録の記載に反する登記の申請は受理されない
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(つまり、)
信託財産に関する登記が申請された場合、登記官は、まず、当該登記が、信託目録の記載事項に違反しないかどうかを審査することになる
(ということは、)
信託目録の登記をするということで、後続登記の申請の際の基準を作成することになる
(後続登記の内容が目録に記載されていなければ…)
錯誤・遺漏・変更等を原因として信託目録の記載内容を追加、変更等する必要がある
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信託目録の登記事項(不動産登記法第97条1項抜粋)
第 1 号委託者、受託者及び受益者の氏名又は名称及び住所第2号受益者の指定に関する条件又は受益者を定める方法の
定めがあるときは、その定め
第4号受益者代理人があるときは、その氏名又は名称及び住所
(以下が『信託条項』欄に登記される)第8号 信託の目的
第9号 信託財産の管理方法第10号 信託の終了事由 第11号 その他の信託条項
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信託条項(不▇▇97条1項8号~11号)の申請情報の作成
<準備>
①信託契約書から後続の不動産登記に関係する事項を抽出しなければならない
②信託契約書の文言をそのまま記載するか、または要約すべきところは要約する
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<問題点 その1>
何を登記すべきで、何を登記すべきでないという確定的なルールがない ➢ 司法書士の裁量に委ねられている
<問題点 その2>
違法な信託条項でない限り、申請された信託条項の内容は申請通りに受理、登記されることになる
※その意味で、『その他の信託事項』は、注意が必要
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『その他の信託条項』に登記する具体的な事項(例)
・受託者の任務終了事由
・後継受託者又はその指定方法
・信託の変更に関する方法
・委託者の地位の移転の特約
・信託監督人関連の事項
・帰属権利者又は残余財産受益者に関する事項 など
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信託⽬録に登記すべき事項(その1)
信託財産の管理方法(9 号)の具体例
①受益者の指図、承諾による処分
②受託者の信託費用のための処分
③処分の際の利益相反の許容
④受託者による担保権設定
⑤信託終了時の信託不動産の帰属
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信託⽬録に登記すべき事項(その2)
その他の信託条項(11 号)の具体例
①受託者の任務終了事由の特約(法 56 条 1 項 7 号)
②信託の変更(法 149 条 4 項)
…法 149 条 1 項から 3 項は登記不要
③委託者の地位の移転(法 146 条 1 項)
④信託財産責任負担債務の条項(法 21 条 1 項)
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信託目録に登記すべきでない事項(※絶対ではない)
1 公序良俗又は法令に違反する事項
2 公示したことにならない事項
3 法令に定められている事項
4 不動産登記上の後続登記手続きと関連しない事項
5 その他
※ただし、1以外の事項は、却下されず登記官の見解、判断で基本登記されることになる
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1 公序良俗又は法令に違反する事項
・平成30年9月12日東京地裁判決
信託終了時に帰属する信託財産が遺留分額を下回ることを定めた信託契約が、遺留分制度を潜脱する意図で信託制度を利用したものと認められ、公序良俗に反し無効とされた事例
(ただし、高裁で双方当該信託契約を有効として和解成立)
2 公示したことにならない事項
・第三者が信託契約の具体的な内容を知ることができない事項
(例)『その他の信託条項については、令和〇年〇月〇日付信託契約書及びこれに付随する変更契約書に記載の通り』
(例)(帰属権利者を定める条項として) 『○○公証役場作成にかかる遺言▇▇証書令和〇年〇月〇日付第○○号記載の通り』
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・契約組成に関与しなかった司法書士が後続登記を行おうとすれば、上記の例では、信託契約書や▇▇証書遺言書を入手しなければ、手続きに入ることができないことになる
・登記審査を行う登記官が審査を行う対象は、登記原因証明情報と信託目録という建前からすると、信託契約書や▇▇証書遺言書を原因証明情報、または信託目録の一部として取り扱ってもらえるかどうか疑義が残る
➢登記官の判断で却下となる可能性もないとは言えない
(とすれば)
① そもそもこのような条項を信託目録に記載しない
② 後続登記を申請する前に、法務局と協議をし、原契約書や遺言書を添付書類として認めてもらうか、具体的条項に更正登記を行う
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3 法令に定められている事項
・信託法に定められている、いわゆるデフォルトルールを記載するかどうか?そもそも論として、信託契約書に記載するかどうかも、問題
➡ 特約事項はともかく、法定事項であれば、簡潔・明瞭化の趣旨から不要という考え方
➡ 民事信託が、法律に精通しない一般の方を対象とすることを考慮すれば注意書き的に記載しておくことも意味があり、必要という考え方
※いずれを選択するかは、信託目録を申請する司法書士の判断となる
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4 不動産登記上の後続登記手続きと関連しない事項(過剰情報)
・信託不動産そのものの取扱いに関連しないものや、後続の登記と関連しない契約内容の登記
(例)
① 受託者による金銭管理の方法 … 信託口口座の開設など
② 信託当事者による受益権譲渡規定 … 将来の受益権譲渡を定めたもの
③ 信託当事者間の免責規定 …受託者の賠償責任免除規定
④ 信託不動産の登記義務 … デフォルトルールなので意味がない
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5 その他
信託目録の共同不動産目録化
(例) 甲・乙の不動産を信託不動産として登記申請する際に、信託目録の
「その他の信託の条項」に、例えば甲不動産の信託目録に、乙が同一信託契約に基づく信託不動産であることを記載すること
➢抵当権の共同担保目録のように公示することで、信託不動産の相互間の関連性が分かり便利(のように見えるが・・・)
➢仮に丙不動産が追加信託された場合、現行不動産登記制度では、丙不動産に甲・乙不動産が、甲・乙に丙不動産が同一信託契約によるものである旨の登記はされないので、個別に変更登記を申請しなければならない
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自分がかかわっていない信託契約書に基づく信託不動産の後続登記を受任した時の注意点
・信託目録の登記内容を確認し、委任された登記が可能かどうか判断する
・可能であれば、受託者等の契約当事者に信託契約書の確認(変更契約も含め)を依頼する
・信託目録の登記内容が、受任する後続登記と齟齬または登記が困難と判断される場合は、法務局と協議するか、事前に信託目録の変更登記、もしくは更正登記を行う
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