Contract
2008年度
特別講義 信託法
その2
1
貸付信託(再掲)
約款
受益証券
投資家
(信託の委託者兼受益者)
運用財産
信託銀行
(信託の受託者)
(運用+資産管理)
投資家
(信託の委託者兼受益者)
(注1)合同運用
(注2)信託契約の本数は多数
投資家
(信託の委託者兼受益者)
2
運用型の商事信託(1):投資信託
○しくみ(図)
○特別法=投資信託法
○委託者指図型と委託者非指図型
(その他、省略)
3
投資信託:委託者指図型
委託業者
(信託の委託者)
(運用指図)
受益権の分割
受益証券
投資家
(信託の受益者)
投資家
(信託の受益者)
運用財産
投資家
(信託の受益者)
4
受託会社
(信託の受託者)
(資産管理)
投資信託:委託者非指図型
受益証券
投資家
(信託の委託者兼受益者)
運用財産
投資家
(信託の委託者兼受益者)
投資家
(信託の委託者兼受益者)
5
受託会社
(信託の受託者)
(運用+資産管理)
<投資信託についての設問の例>
Q10:「委託者指図型投資信託」とは何か(投信法2条1項参照)〔以下、Q17まではこの類型の投資信託についての設問である〕。 Q11:「委託者指図型投資信託」において、信託法上の委託者と受益者は誰か。 Q12:投信法3条は、何を定めているのか(なお投信法4条も参照)。 Q13:投信法7条は、どういう趣旨か。有価証券に運用する合同金信はこの規定に違反しないのか。
Q14:投信法8条は、どういう趣旨か。ETFは、どの条文で認められるのか。 Q15:投信法が委託業者に受益者に対する責任を定めているのは、どのような意味か(投信法21条参照)。
Q16:投信法12条〔権限の委託〕の趣旨は何か。 Q17:約款変更の手続は、どうなっているのか(投信法17条・18条)。 Q18:「委託者非指図型投資信託」とは何か(投信法2条2項参照)〔以下、この類型の投資信託についての設問である〕。誰が信託法上の委託者・受益者か。信託契約の本数は何本か。
Q19:投信法51条・52条・53条の趣旨は何か。 Q20:受託者の受益者に対する責任を(信託法に規定があるのに)特別法で定めているのはなぜか(投信法56条参照)。 Q21:投信法55条〔権限の委託〕と信託法35条(信託業法22条・23条〔兼営法2条
1項で準用〕)との関係はどうなるのか。
6
投資信託及び投資法人に関する法律(投信法)
第2条第 1項 この法律において「委託者指図型投資信託」とは、信託財産を委託者の指図(政令で定める者に指図に係る権限の全部又は一部を委託する場合における当該政令で定める者の指図を含む。)に基づいて主として有価証券、不動産その他の資産で投資を容易にすることが必要であるものとして政令で定めるもの(以下「特定資産」という。)に対する投資として運用することを目的とする信託であって、この法律に基づき設定され、かつ、その受益権を分割して複数の者に取得させることを目的とするものをいう。
第3条 委託者指図型投資信託契約(・・・)は、一の金融商品取引業者
(・・・)を委託者とし、一の信託会社等(信託会社又は信託業務を営む金融機関・・・)をいう。・・・)を受託者とするのでなければ、これを締結してはならない。(以下略)
第4条第1項 金融商品取引業者は、投資信託契約を締結しようとするときは、あらかじめ、当該投資信託契約に係る委託者指図型投資信託約款(以下・・・「投資信託約款」という。)の内容を内閣総理大臣に届け出なければならない。
7
投信法(続き)
第7条 何人も、証券投資信託を除くほか、信託財産を主として有価証券に対する投資として運用することを目的とする信託契約を締結し、又は信託法 第3条第3号に掲げる方法によってする信託をしてはならない。ただし、同法第185条第3項に規定する受益証券発行信託以外の信託であって信託の受益権を分割して複数の者に取得させることを目的としないものについては、この限りでない。
第8条 ①委託者指図型投資信託(主として換価の容易な資産に対する投資として運用することを目的とする投資信託であって受益者の保護に欠けるお それがないものとして政令で定めるものを除く。)は、金銭信託でなければならない。
②信託法151条 の規定にかかわらず、委託者指図型投資信託の信託財産と委託者指図型投資信託以外の信託の信託財産を一の新たな信託の信託財産とすることはできない。
③信託法第6章第3節及び第9章 の規定は、委託者指図型投資信託については、適用しない。
8
投信法(続き)
第21条 投資信託委託会社(当該投資信託委託会社からその運用の指図に係る権限の全部又は一部の委託を受けた第2条第1項に規定する政令で定める者を含む。)がその任務を怠ったことにより運用の指図を行う投資信託財産の受益者に損害を生じさせたときは、その投資信託委託会社は、当該受益者に対して連帯して損害を賠償する責任を負う。
第12条第1項 投資信託委託会社は、その運用の指図を行うすべての委託者指図型投資信託につき、当該指図に係る権限の全部を、第2条第1項に規定する政令で定める者その他の者に対し、委託してはならない。
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運用型の商事信託(2):
合同金信(合同運用指定金銭信託)
○しくみ(図):「投資信託」との比較
○約款:特別法はナシ
○いくつかの論点
●受益権の有価証券化は不可?
●約款変更(特別法ナシ:兼営法のみ-実例あり)
●その他、省略
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合同金信(合同運用指定金銭信託)
約款(受益権の有価証券化なし)
投資家
(信託の委託者兼受益者)
運用財産
投資家
(信託の委託者兼受益者)
(注1)合同運用
(注2)信託契約の本数は多数
投資家
(信託の委託者兼受益者)
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信託銀行
(信託の受託者)
(運用+資産管理)
<合同金信に関する設問の例>
Q22:貸付信託との仕組み上の違いはどこか。特別法がないのはなぜか。信託法上の委託者と受益者は誰か。
Q23:合同金信において、受益権を有価証券化することはできるか。 Q24:合同金信において、約款の変更をするためにはどのような手続をふむ必要があるか。異議を述べた受益者がいる場合、どうすればよいのか。受益権を買い取る場合、固有財産と信託財産のどちらで買い取るのか。
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<合同金信> Q22:貸付信託との仕組み上の違いはどこか。特別法がないのはなぜか。信託法上の委託者と受益者は誰か。
●特別法はないので、業法としては兼営法となる。投資家(資金出捐者)が委託者兼受益者となる(この点は貸付信託と同じ)。
Q23:合同金信において、受益権を有価証券化することはできるか。
●特別法はないが、信託法のもとで可能ではあるが。。。
Q24:合同金信において、約款の変更をするためにはどのような手続をふむ必要があるか。異議を述べた受益者がいる場合、どうすればよいのか。受益権を買い取る場合、固有財産と信託財産のどちらで買い取るのか。
●兼営法5条で行う。受益者が異議を述べた場合、信託財産で買い取る(受益権は消滅する)。
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兼営法第5条
①信託業務を営む金融機関は、多数人を委託者又は受益者とする定型的信託契約(貸付信託又は投資信託に係る信託契約を除く。)について約款の変更をしようとするときは、当該定型的信託契約における委託者及び受益者のすべての同意を得る方法によるほか、内閣総理大臣の認可を受けて、当該変更に異議のある委託者又は受益者は一定の期間内にその異 を述べるべき旨を公告する方法によりすることができる。
②前項の期間は、一月を下ることができない。
③委託者又は受益者が第一項の期間内に異議を述べなかった場合には、当該委託者又は受益者は、当該契約の変更を承諾したものとみなす。
④第1項の期間内に異議を述べた受益者は、信託業務を営む金融機関に対して、その変更がなかったならば有したであろう▇▇な価格で受益権を買い取ることを請求することができる。
⑤信託法第103第7項及び第104条の規定は、前項の請求があった場合について準用する。この場合において、同条第11項 ただし書中「信託行為又は当該重要な信託の変更等の意思決定」とあるのは「定型的信託契約 約款」と、同条第12項中「前条第1項又は第2項」とあるのは「金融機関の信託業務の兼営等に関する法律第5条第4項」と、同項ただし書中「信託行為又は当該重要な信託の変更等の意思決定」とあるのは「定型的信託契 約約款」と読み替えるものとする。
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★追加質問:
信託法における信託契約の変更に関するルールはどうなっているか(信託法149条〔1項と4項に注意〕、103条〔「重要な」ものだけ〕、105条など)。これと信託業法29条の2〔同4項に注意〕、兼営法5条の関係はどうなるの か。信託業法29条の2第5項の意味はどこにあるのか。
⇒信託契約が1つで受益者が1人の場合→信託法149条、信託契約が1つで受益者が複数の場合→同149条+105条、信託契約が多数であって信託財産が合同運用されるような場合(貸付信託や合同金信のようなタイ プ)→信託法上は規定がない、信託業法29条の2第5項が対応。
⇒一般に、信託法の規定によっても(同149条・105条)、信託業法29条の2の規定によっても信託契約の変更が可能(ただし同4項)。さらに〔信託兼営金融機関の場合には〕兼営法5条の規定によっても信託契約の変更が可能。
⇒信託契約が多数であって信託財産が合同運用されるような場合、信託法のもとで信託契約を多数決等で変更しようとする場合、信託契約にどう定めておくべきか(信託法149条4項参照)。
15
信託業法第29条の2
①信託会社は、重要な信託の変更(信託法第103第1項各号に掲げる事項に係る信託の変更をいう。)又は信託の併合若しくは信託の分割(以下この条において「重要な信 託の変更等」という。)をしようとする場合には、これらが当該信託の目的に反しないこと及び受益者の利益に適合することが明らかである場合その他内閣府令で定める場合を除き、次に掲げる事項を、内閣府令で定めるところにより公告し、又は受益者(・・・)に 各別に催告しなければならない。
一 重要な信託の変更等をしようとする旨
二 重要な信託の変更等に異議のある受益者は一定の期間内に異議を述べるべき旨三 その他内閣府令で定める事項
②前項第2号の期間は、一月を下ることができない。
③第1項第2号の期間内に異議を述べた受益者の当該信託の受益権の個数が当該信託の受益権の総個数の二分の一を超えるとき(・・・)は、同項の重要な信託の変更等をしてはならない。
④前3項の規定は、次の各号のいずれかに該当するときは、適用しない。一 信託行為に受益者集会における多数決による旨の定めがあるとき。
二 第1項に定める方法以外の方法により当該信託の受益権の総個数(・・・)の二分の一を超える受益権を有する受益者の承認を得たとき。
三 (略)
⑤一個の信託約款に基づいて、信託会社が多数の委託者との間に締結する信託契約にあっては、当該信託契約の定めにより当該信託約款に係る信託を一の信託とみなして、前各項の規定を適用する。
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資産の流動化
○しくみ(図):「投資信託」との比較
○資産流動化法の適用ある場合と適用なき場合
○金融商品取引法(金商法)上の取扱い
○その他の特別法:債権譲渡特例法
○約款
○いくつかの論点
●仕組み(委託者を誰にするか)
●受益権の有価証券化
●受益権の複層化
●信託契約の変更
●「器」としての信託(受働信託か?)
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資産流動化の仕組み
オリジネーター
SPV
投資家
信用補完
仕組み段階
販売段階
18
流動化の対象資産
(金銭債権等)
資産流動化に関する諸法制
オリジネーター
SPV
投資家
仕組み段階
販売段階
資産流動化法(平成10年制定・平成12年等改正) 証券取引法(平成4年等改正)
⇒金融商品取引法に継承
平成8年特定債権法政令等改正
19
金融商品販売法
(平成12年制定)
債権譲渡特例法
(平成10年制定)
特定債権法(平成4年制定)〔⇒平成16年信託業法で廃止〕
<流動化(証券化)に関する設問の例>
Q25:流動化における「仕組み段階」と「販売段階」の日本の規制はどのようになっているのか。 Q26:流動化において信託を使う場合、どのような規制に服するか。誰が信託法上の委託者・受益者か。 Q27:金融商品取引法2条2項1号に定める信託〔たとえば貸付債権の信
託〕の仕組みの特徴は何か。金融商品取引法上の開示義務を負うことになる
「発行者」は誰で、何がみなし有価証券で、どの時点で発行されることとなるのか。
Q28:資産流動化法にいう特定持分信託とは何か。 Q29:資産流動化法にいう特定目的信託とは何か。 Q30:資産流動化法は、特定目的信託について、信託法のルールのどの点について特別規定を設けているか。
20
信託を用いた流動化
2つのルート
• 資産流動化法の利用
• 資産流動化法を利用せず(信託業法・兼営法の適用はあり)
• 販売段階での金融商品取引法の適用
21
流動化:信託を使った仕組み(一般)
投資家
委託者
信託受益権
貸付債権
受託者
(問い)①有価証券か
②誰が発行者か
金融商品取引法2条1項の場合
金融商品取引法2条2項の場合
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流動化:信託を使った仕組み
金商法2条2項1号の場合の例=金融機関による貸付債権の信託
当初受益者
委託者
信託受益権
貸付債権
受託者
有価証券の発行
(問い)①有価証券か
②誰が発行者か
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投資家
(受益者)
金融商品取引法 第2条第5項
この法律において、「発行者」とは、有価証券を発行し、又は発行しようとする者(内閣府令で定める有価証券については、内閣府令で定める者)をいうものとし、証券又は証書に表示されるべき権利以外の権利で第2項の規定により有価証券とみなされるものについては、権利の種類ごとに内閣府令で定める者が内閣府令で定める時に当該権利を有価証券として発行するものとみなす。
「金融商品取引法第二条に規定する定義に関する内閣府令」 第14条
①法第2条第5項に規定する内閣府令で定める有価証券は、特定目的信託の受益証券、受益証券発行信託の受益証券及び抵当証券並びに・・・とする。
②法第2条第5項に規定する有価証券を発行し、又は発行しようとする内閣府令で定める者は、次の各号に掲げる有価証券の区分に応じ、当該各号に定める者とする。
一 特定目的信託の受益証券・・・ 当該有価証券に係る信託の原委託者及び受託者
二 受益証券発行信託の受益証券(次号に掲げるものを除く。)及び・・・ 次に掲げる場合の区分に応じ、それぞれ次に定める者
イ 委託者又は委託者から指図の権限の委託を受けた者(信託業法施行令第2条各号に掲げる者以外の者である場合に限る。第3項第1号イにおいて同じ。)のみの指図により信託財産の管理又は処分が行われる場合 当該有価証券に係る信託の委託者
ロ イに掲げる場合以外の場合(当該有価証券に係る信託行為の効力が生ずるときにおける受益者が委託者であるものであって、金銭を信託財産とする場合に限る。) 当該有価証券に係る信託の受託者
ハ イ及びロに掲げる場合以外の場合 当該有価証券に係る信託の委託者及び受託者
三 有価証券信託受益証券 当該有価証券に係る受託有価証券を発行し、又は発行しようとする者四 (以下略)
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「金融商品取引法第二条に規定する定義に関する内閣府令」 第14条<続き>
③法第2条第5項に規定する権利の種類ごとに内閣府令で定める時に有価証券として発行されたものとみなされる内閣府令で定める者は、次の各号に掲げる権利の区分に応じ、当該各号に定める者とする。
▇ ▇第2条第2項第1号及び・・・に掲げる権利 次に掲げる場合の区分に応じ、それぞれ次に定める者
イ 委託者又は委託者から指図の権限の委託を受けた者のみの指図により信託財産の管理又は処分が行われる場合 当該権利に係る信託の委託者
ロ イに掲げる場合以外の場合(当該権利に係る信託行為の効力が生ずるときにおける受益者が委託者であるものであって、金銭を信託財産とする場合に限る。) 当該権利に係る信託の受託者
ハ イ及びロに掲げる場合以外の場合 当該権利に係る信託の委託者及び受託者二 (以下略)
④法第二条第五項 に規定する内閣府令で定める時は、次の各号に掲げる権利の区分に応じ、当該各号に定める時とする。
▇ ▇第2条第2項第1号及び・・・に掲げる権利 次に掲げる場合の区分に応じ、それぞれ次に定める時
イ 当該権利に係る信託行為の効力が生ずるときにおける受益者が委託者である場合(信託契約が一個の信託約款に基づくものであって、当該信託契約に係る信託財産の管理又は処分が、当該信託約款に基づいて受託者が他の委託者との間に締結する信託契約に係る信託財産の管理又は処分と合同して行われる信託に係るものを除く。) 当該権利に係る信託の委託者が当該権利(委託者が譲り受けたものを除く。)を譲渡する時
ロ イに掲げる場合以外の場合 当該権利に係る信託の効力が生ずる時二 (以下略)
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